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2007年11月の1件の記事

『やもめぐらし――寡婦の文化人類学』の書評を『週刊金曜日』10/19に

Yamome
お知らせが遅れましたが、『週刊金曜日』10月19日号に書評を書きました。
対象本は、同世代の文化人類学者・椎野若菜さんが編集された『やもめぐらし――寡婦の文化人類学』(明石書店)。

ものっすごくイイ本です。これまで日の当たることのなかった、伴侶を亡くした女性「寡婦」に焦点を当てています。

多くの文化圏で、寡婦には、一定期間は再婚してはいけないなどのセクシュアリティにたいする何らかの制約が課せられています。社会は寡婦に「貞淑」たれと要請するわけですが、その「貞淑な寡婦イメージ」を意識的になぞって、みごと亡夫の親族から婚資を得たマヌス島の寡婦の話は痛快です。

かと思えば、彼女のような忍耐力と演技力がなくとも、寡婦が生きのびていける社会もあり。パプアニューギニアのテワーダは、性別役割分業が強固すぎるためにかえって寡婦がしっかりと居場所を確保できる文化圏です。夫を亡くすと急激に経済力が落ちる社会というのは、しょせん中途半端な――誰かにとってオイシイとこどりでしかない――性別役割分業しか実施されていないという示唆が得られる事例であります(かといって、性別役割分業を徹底すべきという主張が導けるかというと、そうではありません。性別役割分業を極力薄める方向でも、伴侶をなくした女性が経済力を落とさずに済む社会を設計することはできるわけですから)。

中身だけでなく、装丁もすばらしいのです。表紙には、真っ赤なバックにエッチングで描かれた花が一輪、咲いています。
カバーや見返しの紙質にも装幀家さんのこだわりが見えます。すみずみまでモノとしての本にたいする愛情があふれている一冊です。

残念ながら、Amazonでは新品は品切れ中。ほかの書店で見かけたら、マスト・バイです。

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