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アウトドア東方神起2 鹵の巻

感情がブレることはあまりないほうだが、東方くんには泣かされることが多い。

まず、2006年韓国での初コンサート「Rising Sun」におけるユノとユチョンのやりとり、「どこのメンバーですか?」「東方神起のメンバーです!」で泣いた。

ユチョンの、大好きなメンバーと活動できるうれしさや、グループの一員であることの誇りが、「東方神起のメンバーです!」の一言に凝縮されていたからだ。
結成前のユチョンのアメリカでの苦労も思えば、泣かずにおれない。泣かずばなるまい。


2008年韓国の GOLDEN DISK AWARDS で、ユノがジェジュンの膝を借りてバク転した時も、息のぴったりぶりに互いの厚い信頼感が感じ取れて、泣いた。よく見ると、パフォーマンス直前、ジェジュンはユノに向かってこっくりうなずいている。態勢準備ができた合図だろう。そのことに気づき、さらに目頭が熱くなった。

今年の東京ドームの、スクリーンに映る自分とともに踊る「呪文」での、一分のスキもない舞台にも、涙、涙だった。とてつもない練習量がしのばれたからだ。

そんな泣きリストに、11月21日韓国での Mnet Asian Music Awards でのスピーチが、新たに付け加わった。

3人のみで、授賞式には不釣り合いな地味なスーツで登場し、信頼する大人から切り離された子どものような、頼りなげな、寂しげな表情でジェジュンがいった、「もしかしたら見ているかもしれない2人のメンバーに、愛してる、と伝えたい」の一言。

わたしだけでなく、世界じゅうのファンが泣いた。
事実、この人たちは信頼する仲間から、外的な力によって、切り離されているからだ。

この前、阪神ファンの50代の男性が、故障や2軍落ちを乗りこえた選手がバッターボックスに立つだけで、泣けて泣けて仕方ないと語っていた。
年齢や性別を問わず、人は思い入れのあるものに涙する。



で、アウトドア東方神起である。
まずは、難関から攻めることにした。リーダー、ユノさんの「鹵」の字だ。

音読みで「ロ」もしくは「ル」と読む。
海から取れるものが「塩」なのにたいし、地中から取れるものが「鹵」だ。岩塩がそれに当たる(『漢字源』)。

そういえば、デビュー当時のユノ氏は、「世の中の光と塩になろうという意味があるんです」と自らの雅号「瑜鹵」について説明していた(Mnet Japan『I Love 東方神起』2009年10月27日)。

世の「光」になりたいというのは分かる。しかし、「塩」になりたいという新人アイドルの志をどう解釈したらよいだろう。
古代ローマでは、兵士への給与を塩で払っていたという。それだけ塩が珍重されていたということだ。
人体にとっても、塩分は無くてはならない成分である。
なので、世にとって欠くべからざる存在になりたい、という意気込みとして、解釈している。いまのところ。

正解はどうなんだろう。ご存じの方がいらしたら、教えてください。



さて、「鹵」の字である。
リサーチの末、埼玉の稲荷山古墳から1968年に出土した鉄剣にこの字が刻まれていることが判明。剣の裏面に
「獲加多支鹵(ワカタケル)大王」とあり、雄略天皇のことを意味しているらしい(ただし異論もあり)。

現在は、埼玉県立さきたま史跡の博物館でこの鉄剣に会える。
室内に展示されているので、厳密にはアウトドアではないのだが、土の中から出てきたからには、「元アウトドア」である。調べたかぎりで、日本国内でこの文字をゲットできるのはここだけという事情もある。

残暑きびしい9月のある日、電車とバスを乗り継いで、行ってみた。

たしかに、鉄剣はあった。

写真は鉄剣を拡大したパネル。下から2文字目が、お目当ての字である。
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ここで、やや戸惑う。

「鹵」の四角の中は「※」のような形をしているべきだが、いまいちそう見えない。

傍らの解説パネルを見ると、それは「九」であることになっている

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ますます戸惑う。
これをユノさんの「鹵」の字として取り上げてよいのか。

一方、別の解説パネルには、「鹵」の字から一つ点を取り去ったような文字が使われている。

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一体どっちが正解なのか。
というか、どちらの字が刻まれていると、博物館では考えているのか。
そして、これらの文字は「鹵」と同一性ありと踏んでよいのか。

ひじょうに気になる。学芸員さんに尋ねてみる。

すると、1982年刊の報告書『埼玉稲荷山古墳 辛亥銘鉄剣修理報告書』を見せてくれた。

かの文字を「鹵」と認定していること、「必」を崩した「※」モドキとして四角の中の形象を解釈していることが書かれている。
鎌倉期の漢和字書である『字鏡集』においても、似たような形象を用いて「鹵」の字が表現されているという(31頁)。

だとしたら、最初の解説パネルにあった、「九」を用いたあの字は何なのだろう。

2枚目の解説パネルの字も、点が一つ欠けている以上、正確な「鹵」ではない。

両者は、「鹵」の異体字というわけでもなさそうだ。

あとで『漢字源』、『新訂 字統』、『新潮日本語漢字辞典』、『学研 漢和辞典』の「鹵」の項を調べたが、異体字への言及はなかった。

やや煮え切らない感じは残る。が、報告書に依拠し、これをもって「鹵」の字をゲット、とする。

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(つづく)

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