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『菊地成孔の粋な夜電波』がおもしろい理由、そして7/31は少女時代&韓国特集である件

 すでに多くの方がご存じと思いますが、6月の聴取率調査で同時間帯第1位に輝いた日曜20時からのTBSラジオ『菊地成孔の粋な夜電波』がたいへんおもしろいです(2012/01/08 遅すぎる追記ですが2011年10月より放送時間が金曜20時からになりました)。

 ジャズ・ミュージシャンの菊地成孔さんが粋な音楽と軽快なおしゃべりでお届けする55分。一人称が「あたし」で、時おり噺家テイストが混ざる語りは、格調高くも適度に泥くさく、「グラサンに高級ブランドの服を着用、難しそうな本を書かれており、フランス文化に精通、ファッション批評もしている博覧強記のジャズメン」というこちらの(というか、以前私が持っていた)勝手な思い込みを心地よく裏切ることうけあいです。

 この番組のおもしろさを肚にストンと落ちる形で理解したのは、人気歌手だった中山千夏さんの「とまらない汽車」(1970年)がかかった6月12日の第9回放送においてでした。この曲がかかるきっかけとなった、「跳んでる女」と呼ばれていた菊地さんのすてきな叔母様が77歳で亡くなったときのエピソードも胸にせまるものがあり、偉そうな言い方ではありますが、「あ、名番組生まれたな」と思った瞬間でした(*1)。

 おもしろさの要因を解析してみるに、チャーリー・パーカーと中山千夏を一直線上に並べ、歌舞伎町のヤバい話と愛する親族の話を無理なく接続してしまう菊地さんの音楽・トークのカバー範囲の広さかと思います。もうすこし補足すると、カバー範囲が広いことが、たんに多様性を確保することに終始せず、(主観的にはともかく客観的には)菊地さんご本人の属性に照らせば〈他者〉となるであろうモノ・ヒト――ジャズ・ミュージシャンにとっての昭和歌謡、40代男性にとっての70代女性――へのリスペクトにまで達していることがおもしろさの理由、となるかもしれません。

 すこし自分の話をさせていただきますと、本日終了した2011年度の1学期は、これまでになく精神的に厳しい日々でした。原因は原発事故。39年間生きてきて、「どこまで人は〈他者〉にたいして不寛容になれるか」をこれほど濃厚に、連続して見せつけられたことはない。

 高度の放射線量の空間に子どもを留め置こうとする官僚、避難しようとする人を非国民あつかいして恫喝する医者、子どもだけでも疎開させたいという母の願いを世間体を気にして却下する家長、原発労働者にうすっぺらな賞賛を送りながら彼らの命を軽視する政治家、業者を雇って原発反対の声を封じようとする省庁、おのれが原発労働に従事する可能性を棚上げ(根拠ないのに!)しながら原発反対の声に冷笑をあびせる一般市民、etc. が入れ代わり立ち代わり花びら回転で登場するパノラマ絵巻は、悪夢などではなく正真正銘のリアル。この人たちの〈他者(子ども、女、労働者)〉にたいする不寛容さを見るにつけ、心底の絶望を覚え、憎しみのほむらを燃やしつづけた約130日でした(と過去形で語れるものでもなく、今後何年かは続くでしょう)。

 そんな〈他者〉への不寛容に精神をヤられつづける日々に、〈他者〉へのリスペクトを惜しまないラジオ・パーソナリティが降臨。チャーリーからの千夏からの歌舞伎町レポートからの叔母への弔辞……のごった煮感に、私は〈他者〉への不寛容性とは真逆のものを感じとりました。

 そらー、菊よね。じゃなかった、聴くよね。

 さまざまなジャンルの音楽・トークをカバーすることはご本人も課題とされておられるようで、いろいろな情報が広く浅く載っている一般週刊誌のような番組でありたいとインタビューでおっしゃっています(*2)。

 そしてその試みはみごと成功している。これまで E-mail 、P-mail (Paper mail。ハガキのこと)を紹介された人びとをふりかえってみれば分かりますが、挨拶もそこそこにマニアックな話題を展開する音響マニア、ハガキにジャズ・ジャイアンツの抽象画を描いては送ってくる天才画伯、音楽には詳しくないが菊地さんのトークが好きだという60代女性、この番組でジャズにはじめてふれた刑務所にて服役中の男性、少女時代評をおねだりするK-POP好き(わたくし)……とさまざま。先日の聴取率調査では、意外や意外、マス単位でも60代女性にアピールする番組であることも判明しました。リスナーの多様性は、そのまま番組内容の多様性を裏書きするものです。

 リアルな場面では出会わないかもしれない多種多様な人びとが、「菊地成孔」という媒体を通じて人生のひとときを共有していること(*3)。これは瞠目すべきことです。

 そして、さきほどの話をもちだしますが、〈他者〉への寛容性の涵養が他者との対話を前提するとしたら、異質な〈他者〉同士をつなげる「菊地成孔的なもの」は対話をはじめる糸口になりはしまいか。じっさいに対話することの難しさをわきまえながらも、その可能性に希望を見いださずにはいられません(*4)。

 ということで、いろんな人が集ったほうが楽しいので、あなたも『菊地成孔の粋な夜電波』に Let's join。7月31日は、おねだりメールをしてから2週ほど延期になっている少女時代の話をしていただけるハズです。ソシペン、K-POPファンは必聴です。アナリーゼ(楽曲分析)つきというのでピアノ等が傍にあるといいみたい。スグに入手できそうな鍵盤楽器といえばピアニカですが、このために御茶の水まで行って購入しようかと検討中です。ファーン(←ピアニカ音)。

〈追記〉
ポッドキャストでは肝心要の音楽が流れません。本放送を、できればリアルタイムでお聴きになることをおすすめします。

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(*1) ポッドキャストにも収録されています。何度も聴き返している回です。http://www.tbsradio.jp/denpa/2011/06/92011612-2.html
それから、『とまらない汽車』のジャケ写、衣裳といいポージングといいとてもカッコいいです。思えば、子役→ 女優・流行歌手→ ウーマンリブ→ 議員→ 活動家の中山千夏さんも多様性の人でした。中山さん著『私のための原発メモ』(PDFで無料公開中)分かりやすくてためになります。http://onnagumi.jp/appealFile/20110426genpatu.pdf

(*2) 『TV Bros.』2011年6月11日号。いいインタビューです。たまたま目にした光野桃さんによる菊地さん評でも、複合的、多層的な音楽性が絶賛されていました(『クロワッサン』2011年6月25日、107頁)。

(*3) とはいえ、第14&15回の放送後記によれば、リスナーが集まるイベントをプロデューサーが提案しており、リアルな場面で多種多様な人びとが出会ってしまうかもしれません。

(*4) それを考えるにあたって大いなる示唆を与えてくれたのが、浅野智彦さんの『趣味縁からはじまる社会参加』(岩波書店)と篠原雅武さんの『空間のために 遍在化するスラム的世界のなかで』(以文社)でした。この2冊を紹介がてら、〈異質な他者〉との対話の可能性について考える記事を書きたいけど書けるかな。

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