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【避難所】「みんな顔見知りですからガハハ」的な環境と被害者を黙らせる環境は表裏一体

 下記の『毎日新聞』記事を読んだ。「3人が被害にあったことは避難所の公然の秘密のようになっていた」ってのが気持ち悪い。映画『ビー・デビル』を思いだした(*1)。

 今回の記事で明らかになった問題点は、

 ・避難所は女・子どもにとって危険な場所である。「避難所からの避難」が必要なレベルだ。

 ・夜間常駐する自治体職員はアテにならない。

この2つ。さらに3つ目として以下の点が加わる。

  ・顔見知りが多いことが、むしろ被害者を黙らせる。

 「避難所メンバーはみんな顔見知り/家族みたいなものですから(暴力など起こりませんよ。ガハハ)」的なことを男性リーダーが語りたがる環境(*2)と、性犯罪の被害者を黙らせる環境とは表裏一体だということを3つ目は示唆している。「みんな顔見知り/家族だよね~」という同調圧力の強い場所で構成員の暴力を告発すれば、告発した者のほうが「和」(いま流行りの「絆」でもよい)を乱した者として責められる。そういう場所で被害を告発するのは至難の業である。

 問題点を克服するために、何をすべきか。長期の避難所ぐらしをしなくてすむような条件を整備するのは当然として(*3)、今後は、女・子どもの避難所と、中学生以上の男の避難所を完全に分けるべきだ。家族がバラバラになるって? ならないよ。昼間に会えばすむ話である。

 そして、長期的にやるべきは次のことがら。暴力の傍観者もまた加害者だという認識を社会全体で共有する。暴力を選ばないですませる方法を男性に教える。女・子どもを被害から遠ざける方法を実践するのも大事だけど、上記のこともする。

 ……って言われ続けてもう30年ぐらい経つような。気がついた人がやらなきゃいけないんだよね。本で書いたり、日々の授業などで話したり、ちょっとづつ自分もやってるつもりだけど、多勢に無勢だから、まったく間に合わない(*4)。


  (*1) 原題 "김복남 살인사건의 전말(キム・ボクナム殺人事件の顛末)"。チャン・チョルス監督、2010年韓国。ネタバレ満載かつ分かりやすいブロガーさんの解説はこちら

 (*2) たとえばこんな環境。「宮城県のある避難所では、衝立の資材は届いたそうですが、男性リーダーの「ここはみんな家族だから衝立などいらんですよね」の一言に反対もできず、着替え等は布団の中で行ったそうです」(『くしろ男女いきいき参画通信』37号、2011年12月26日1頁。→リンク)。

 「避難所を運営する男性たちの判断によって、避難所に間仕切りを設けることはコミュニティの団結上好ましくないとか〔中略〕女性の切実な願いが否定されてしまう場面がしばしばあるといいます」(「避難所暮らし 女性の状況改善を」NHK『視点・論点』2011年5月23日。→リンク)。

 避難所に間仕切りを好意で持って行ったら、「誰が持ってこいと言ったんだ」と男性2人に怒られたという宮大工の話もあり(読売オンライン/読売新聞 2011年5月26日。→リンク

 「潜在的な加害者」と見られた時の男性の反撃ぶりはすごいよね。「間仕切り持ってきた→ 避難所の男性は覗きをする潜在的な加害者であると宮大工に思われている」という認識が男性2人の側にあったのではないかと邪推するんだが。

 この邪推が正しければ、男性2人が駆使したのは、「東大話法」の「規則6 自分の問題を隠すために、同種の問題を持つ人を、力いっぱい批判する」(安冨歩『原発危機と「東大話法」』136頁ほか)のバリアントとして考えることができそう。「自分の問題を隠すために、問題の潜在性を示唆/指摘してくる人を、力いっぱい批判する」というものだ。

 「ここはみんな家族だから衝立などいらんですよね」、「避難所に間仕切りを設けることはコミュニティの団結上好ましくない」というセリフも批判の形こそ取っていないが、自分の問題を隠蔽するための方便なのかもしれない。

 それにしても、上記セリフを述べる男性リーダーの家庭では、年頃の娘が父親の前で堂々と着替えたり、父親が自身の下半身を娘に見せながら着替えたりしているんだろうか。それで家族の「団結」力を高めたりしているんだろうか。私にとってそんな環境は「家庭」ではなく「地獄」だが。

 (*3) たとえば、日本全国にあらかじめ仮設住宅を作っておき、被災者がすみやかに移動できるシステムを構築しておいたり、空いている住居や宿泊施設を被災者が無償で手軽に利用できる仕組みがもっとたくさんあれば、そもそも長期の避難所ぐらしをしなくてすむ。

 「住民が各地に散ると、精神的サポートにもなりうる地域の人間関係が壊れるのでよくない」というのであれば、地域ごと避難できるような大規模なインフラを作っておけばよい。重要なのは、避難期間中の被災者のプライバシーと精神衛生の確保。「だだっぴろい体育館で男女ごちゃまぜで雑魚寝する」避難所ぐらしでは、それが達成できないことはもう十分すぎるほど分かった。それなら、他の方法を模索するしかない。

 記事では仮設住宅での暴力も問題になっている。仮設住宅やそれに準ずる施設での暴力は、別の方法で対応する。とにかく、数カ月に渡る/男女ごちゃまぜの/避難所利用ありきの発想はもうやめるべき。

 (*4) 私が書いた関連記事に「被災地の性犯罪はデマ、にどう対抗するか」WEBRONZA、2011年7月1日。全文読むにはお金が必要。→リンク。 (以下 3/4 16時追記) 男が暴力と手を切るための方法や、暴力を見聞きした第三者がとるべき態度については、澁谷著『平成オトコ塾 悩める男子のための全6章』(筑摩書房)の第4章に書いています(追記おわり)。


------------- 以下、一部引用 ---------------

東日本大震災:暮らしどうなる? 避難所、仮設での暴力防げ

(毎日jp /毎日新聞 2012年3月1日 東京朝刊。→リンク

 「福島県内のある避難所では、夜間に30~60代の女性が襲われ性的被害を受ける事件が3件起きていたという。若い女性から「私も襲われるかもしれない。怖い」と打ち明けられ知った。気配や物音で、3人が被害にあったことは避難所の公然の秘密のようになっていた。

 加害者は同じ避難所の中年の男とみられ、周囲も感づいていた。男は深酒をして酔っていることが多かった。吉祥さんは、夜間常駐する自治体職員に相談したが「なんとなく分かっているけど、悲鳴が出ず被害の届け出もないので男女の営みに口出しできないんです」と言われた。

 その後に襲われた別の中年女性は「やめて」と大声を上げたため、110番通報で警察が来た。しかし女性は「この年で襲われたなんて恥ずかしい。家族に迷惑がかかる」と被害届を出さず、警察の事情聴取から帰ってきた男は、同じ避難所で暮らし続けた。解決策が見いだせず、吉祥さんが男に直接抗議したところ、男は当てつけのようにズボンを脱ぎ下半身を見せた」

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