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笑えて、泣ける。韓流と同じ感動をくれる北原みのりさんの『さよなら、韓流』

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 ユノの誕生日ケーキ写真をアップしたら、「先生、おもしろいですね」と学生にいわれた澁谷ですこんばんは。こちとら真剣なんですが。チャンミンのひとり誕生日会も敢行しました。写真はのちほどアップします。

 ところで、韓流女のみなさまにおかれましては、北原みのりさんの『さよなら、韓流』(コチラ)はお読みになられましたでしょうか。北原さんと韓流好きの女たちとの対談集です。対談には私も参加させていただきました。

 「韓国人男性よりも日本人男性のほうがペニスがでかい」はデマであるとズバリ指摘する文章をはじめ、北原さんのするどいエッセイも収録されています。

 夢中で読んだよね。地下鉄で移動しているときに読んでいたけど、読み終わりたくなくて、用事のある駅で降りて、ベンチを探すひまさえ惜しくて、立ったまましばらくホームで読みふけりました。一瞬たりとも目が離せなかった。私が読みたかったものがここにある!って感じで。

 以下、読みどころを抜粋しつつ、コメントを書いてみます。

◆信田さん、北原さんとの至福の時間

 やや手前味噌ですが、心理カウンセラーの信田さよ子さん、北原さん、わたくしの鼎談、「韓流はフェミである!」はおもしろいです。

 昨年の4月に信田さん、北原さんらご一行がソウルにいらっしゃいました。すばらしいお天気のなか、わいわいしゃべりしながらアックジョンのかわいい服屋や靴屋を物色し、ユノが来たお店でお昼を食べ、そののち東方神起がカップルトークを撮影した eVERYSING に入って鼎談、というゴールデンな流れのなかで収録されたものです。

 コレ神の啓示キタと思った瞬間が、以下の部分。現場で話している時、信田さんの指摘がすごすぎて鳥肌がたちました。北原さんふくめ、私の周囲のフェミニストがどんどんK-POPにはまっていくのだけど、それはなぜだろうという疑問を持っていることを以前、書きましたが()、その疑問にたいする回答でもあると。

 以下の部分です。

澁谷 私、10年くらい前はお笑いファンだったんですよ。あの頃は番組録画するのってビデオテープだったじゃないですか。テープを大量に買いに行ったときにひときわ安い山があって、それがLG製だったんです。当時は画質もあんまりよくなくて、安くて粗悪なものを出すLG=韓国っていうイメージしかなかった。

北原 そうそう、私も。でも、いまや、携帯の性能いいし、海外に行くと、iPhone とサムソンがいい勝負してる。それに引き換え、ソニーがだめになっていく姿には、どっかで小気味いいと思う自分がいる。胡座かいてたよネって。自分がどの視線で言っているのかわかんなくなる。なんなのこれ。

澁谷 勝ち馬に乗る視線だと思います。

北原 え、いま、LGに乗ってんの? 私たち。

信田 それって [中略] なんじゃないの? 韓国を使って [中略] してるんだよ」(61ページ)

 はい! 中略の確認は本のほうで! ちなみに現在、私が愛用しているスマホとブルーレイプレイヤーはLG製です。デザインはイマイチだけど、性能がよい、いいヤツです。がんばったよねLG。

 さらに手前味噌をかさねると、「同一化願望の対象として東方神起がいる」という澁谷の発言を受けて、「信田さんは? 自分が東方神起になりたいと感じたことはあります?」と北原さんが信田さんに水を向け、「ないですよ! なんで私が東方神起に? 全然なりたくない(笑)」と信田さんが答えるシーンも気に入ってます(52-3ページ)。澁谷の切なる思いと、それをばっさり切り捨てる信田さんがおかしくて。

 今思い出しても懐かしさにほわーっとなるぐらい、信田さん、北原さんとの対話は本当に楽しかったです。収録された部分以外にもいろんな話をしました。K-POPペンの女子たちと話をすると、5時間、10時間は平気でしゃべれるよね。コンサートを見るために遠征に行くと、おしゃべりが占める時間のほうが圧倒的に多いから、コンサートの思い出が相対的に小さくなったり(笑)。

 K-POP じたいにいろんな事件やドラマがあるから、事件やドラマの解釈をつうじて相手がどういう考えの持ち主なのかが分かって、距離が近くなる気がします。北原さんも「おわりに」で書いているけれど、韓流は女と女を結びつける言葉というのは当たっているな、と。

◆強い女対決

 北原さんは私がこれまで出会った人類のなかでナンバー1か2ぐらいに強いひとですが、そんな北原さんに伍しているのがSJペンで社会学者の韓東賢さん。次のやりとりは、強い女がふたりここにいる!という感じで、軽く手に汗にぎりました。

北原 韓流にはまるのは、圧倒的に女性じゃないですか。なんでなのかな。

 一般論ですけど、女の子のほうがもともと社会的な規範というか、制度の側にいないから乗り越えやすいってところはあるのかな。

北原 そう、「オレ、パクチーまったくダメ」とか言う男多いけど、つべこべ言わずに食べろよ!

 私はそんな強要はしない(笑)。男はかわいそうね、女の子のほうが自由だね、って同情すればいいんですよ」(120頁)

 私だったら、「そうそう、そうだよね!」と北原トークに乗ってしまったところであろう。が、北原トークに乗ることなく、しかし、北原さん以上のインパクトでもって、かつ男子には分かりにくい形で男子を批判するというレトリックに、韓さんすげーわ、と思いながら線を引きました(この本は線引きまくりです)。

 が、こうやって「すげーわ」とか呑気にいってられる発言だけが、韓さんの「強い女っぷり」を示してるわけではなく。次の部分は痛かった。まさに自分に向けられてる批判だったから。

北原 国なんて背負いたくないけど、私たち生きてるし、頑張りたい。どうすればいいの?

 あえて言わせていただきますけど、そんなに頑張ってくれるなら、フルメンバーにはもうちょっと責任を持ってもらいたい気はしますよ。だって、日本のパスポート持ってるじゃん」(126頁)。

 フルメンバーとは、日本社会の正規メンバーと認められている日本人のことです。在日は正規メンバーとして認められていない、という現実認識が韓さんにはあります。そしてその現実認識は残念ながら当たっている。

 フジデモがあった2011年夏、在日でK-POP好きの人に、いっしょに戦おうよみたいに私から誘ったんだけど、断られたんだよね。あなたと私の立場は違う、というニュアンスで。その理由が、遅まきながら分かりました。そして自分のノーテンキぶりを恥ずかしく思いました。

 日本社会において、日本人と在日とでは、権利も発言力も不均衡に配分されています。もちろん、日本人のほうが多く持っている。そして、在日にとって生きづらい社会を作ってしまったのは日本人。日本人であるわたくしが「いっしょに戦おうよ」と呼びかけるべきは日本人だし、「レイシスト行動やめろ」と呼びかけなければいけないのも日本人にたいして、です。

 これは在日をカヤの外に置くということではありません。日本人が起こした問題の解決に、在日を動員するのは筋が通らない、という話です。日本人であるわたくしが在日の人のケツをたたいて、「さあ、いっしょに戦いましょう」ってどんなカンチガイなんだと。イラつかれても仕方のないノーテンキぶりでした。

◆「とりえあえず畑でも耕せ!」

 女性向けAVのプロデューサー牧野江里さんをこの本ではじめて知りました。とてもおもしろい方。以下の牧野さんの発言は響きました。そして、「恋愛なんざ、そんなめんどくさいもん、しなくていいですよ~」なんつって男子を甘やかしてきた我が身を反省しました。

 いいわけすると、「そんなめんどくさいもん」発言は、「恋愛になんか興味ないのに、世の中が恋愛しろしろといってくるのでウザくて困ってる」という男子向けのもので、恋愛したいんです、って男子にはマニュアルを100冊読め、そして実践をつめ、といってきました(くわしくは拙著『平成オトコ塾 悩める男子のための全6章』筑摩書房)。

 だから、反省なんてしなくてもいいのかもしれません。が、「恋愛になんか興味ない」という男子の発言のうち99%はウソなんじゃないかという疑惑がある時もたげてきまして。

 「恋愛なんてしなくていいじゃんという澁谷先生の言葉に心をうたれました」(大意)という大学生男子とお話をしたことがあるんだけど、話していくうちに、「トイカメラをぶさらげて、内股で歩いているような不思議ちゃん系の女の子とジブリアニメに出てくるような恋愛がしたい」(記憶あいまいだけどだいたいこんな感じ)という細部にわたった願望をいだいていることが発覚。

 嘘ばっかじゃねえかと。でも、わたくしとの対話によって、内なる願望に気づいてよかった、マニュアル100冊読んで実践してみてね、と背中を押してあげました。まだ学生なので。学生じゃなかったら話の途中でテーブル叩いて帰るけど。

 それで、肝心の牧野さんの発言です。「自分たちはこれまで女に値段を付けていたけど、韓流のすごい肉体を見せられて、比べられて、俺には値段が付かないかもしれないって気づきだした。韓流女に対するバッシングは、男たちの焦りだとしたら納得もするよなと」という北原さんの発言からはじまった文脈におけるものです。

牧野 ネット以外のところでも、ちゃんと喋れるように頑張ろう。男ほど努力で得られるものが大きい生き物ってないじゃないですか。すっごいブサイクでも、金稼げばもてたりするし。だったらみんな努力すればいいじゃない。わかっているのに、仕事が国が女がどうのこうのとか、わけわかんないこと言ってるぐらいだったら、とりあえず畑でも耕せ!」(136-7頁)

 シビれる。そうよね、本当にそう。自分の父ちゃんの世代よりは稼ぎづらくなったかもしれないけど、まだまだ男女の不均衡はあるし、女の子の側にも「男の人に頼らなきゃ」って思いがあるしさ。若い女子の専業主婦願望も高まっている昨今ですし。このチャンス、みすみす逃してるのは男子じゃんね。

 というと、「そんなに責めたら男子がかわいそーでしょ」という学級委員チックな女子が出てくるからまたややこしい。つか、そういう役回りの女子だと私じしんが誤解されているフシがあるのだけど。ちがいますから。虎穴に入らずんば虎子を得ず。女子を得たいのならば、男子はとりあえず畑でも耕すべき。そして、ネット以外でも話せるように練習して、腹筋を鍛えるべきだ!

◆データを持たない社会学者・上野さんとの対談について

 最終的には、刊行後に出た上野千鶴子さんのツイート(後述)で、上野さん自身も反省してるらしきことが分かったのでまぁいいかと思いましたが、読んだ時には、上野さんとの対談部分いるのかねと疑問でした。

 上野さんは韓流女ではありません。だから、上野さんができるのは、「ファンとしての萌え語り」ではなく、「社会学者としての分析」なんだけど、分析に必要な基礎データを持ってないんだよ。

 具体的には上野さんが韓流女について語っている以下の部分。韓流女は不愉快という認識を上野さんが持っていることを前提に読んでください。

上野 相手の言語を覚えようと努力する必要もなく、相手の母国語に何のコンプレックスも感じる必要がなく、思うさま消費して使い捨てができる。こんなに便利な消費財があるだろうか」(145ページ)

 K-POPファンの女子の韓国語熱がいかなるものか、上野さんはご存じないのね。大学で韓国語(朝鮮語)担当の非常勤講師をとりまとめる仕事をしている知人は、「講師が足りない!」と、いつも焦っているよ。依頼しても、すでに他の大学の授業が入っていて断られてしまうのだと。クラスを増設しても増設しても、受講者が多すぎて足りないんだって。

 受講者のほとんどは、 K-POP きっかけで韓国語(朝鮮語)を学ぼうと志した女の子たち。街の韓国語教室も 韓流& K-POP きっかけで盛況になったし、ソウルの語学堂で出会った日本女子のうち、約半分は K-POP ファン。もちろん、他国の学生にもK-POPファンはいて、アイドルをめぐってふつうに話が成立します(考えたらそれもすごい現象)。「相手の言語を覚えようと努力する必要もなく」というのは事実に反しています。

 でも、刊行後に上野さんが以下のようなツイート(@ueno_wan)を流していたから許します。一人の人の認識を変えるパワーをこの本は持っていたということよね。

 「北原みのりさんの新刊『さよなら、韓流』(河出書房)「韓流、好き!」というだけで「愛国派」からネット攻撃受ける、なんてのも初めて知った。竹島騒ぎごときで韓流熱を冷ますな、韓流女!とかえってエールを送りたくなる」(2月27日9時12分)
 https://mobile.twitter.com/ueno_wan/status/306693271797764096?p=v

◆ふたたび、北原さんの強さについて

 北原さんはいっています。「今まで何冊か本を書いてきたけれど、この本ほど気が重く、筆が進まなかった本はない」と。理由は端的にいって、攻撃されるからです。

 北原さんにかぎらず、2012年夏の領土問題ぐらいをきっかけに、韓流好きとか K-POP 好きといっていると攻撃される国に日本はなってしまいました。「韓流など、たかが音楽、たかがドラマ、たかがアイドル、たかが女の欲望」にすぎないのに!(10ページ)

 この本は、対談と、北原さんのエッセイを時系列で並べています。あえてそういう編集をしたのだそうです。一年前は、「韓流かっこいいー!」だけで邁進し、元気だった北原さんのトーンが、だんだん暗くなっていくことが分かります。

 最終的に、「韓流はエロである」だったタイトルは、「さよなら、韓流」に(197頁)。く、暗い……。「韓流をもう見ません、はいさようなら、という意味ではもちろんない」(198頁)。ではどういう意味かというと。本書を読んでください。私はここで泣きました。

 と同時に、やっぱり北原さんは私が出会ったなかで1番目か2番目に強いひとだと思ったよね。だって、自分が弱っていることをさらけだせるのは強くないとできないことだから。この強さは、我が嫉妬心にすら向き合うことができず、「メディア批判」とか「愛国」とかの言葉でごまかすネウヨにはない。絶対にない。

 2012年をもって強制終了させられ、もしかしたらなかったことにされてしまうかもしれない現在の韓流&K-POPファン状況を北原さんが書き留めてくれたことに感謝したいです。

 そして、北原さんのこの言葉を読んで、冬の木の芽が春を待つように、次の展開を待とう、待つだけじゃなくて努力しよう(日本のレイシズムをおしとどめるとか、もっと韓国語がんばるとか)、と思いを新たにしました。

「納得できない失恋、政治力で引き離される恋愛は、さらにドラマチックな展開を迎えるのが歴史の常というものでしょう? それこそ韓流の醍醐味というものでしょう?」(198ページ)

 ほかに、対談には西森路代さん、山下英愛さん、少年アヤちゃんさんも登場されています。特定の誰でもない、K-POP スターの人形(タカハシカオリさん作)の表紙もいいし、1995年から2012年にいたる韓流年表(内田嘉さん製作協力)も女の欲望が歴史をつくったことが実感できてぐっときます。

 まだ書きたいことがあるけれど、このへんで。読むと、誰かとおしゃべりしたくなる本です。届くべきすべての人にこの本が届いてほしいです。

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